日常と言う名の幸せ ~東日本大震災のあの日から~

日常と言う名の幸せ ~東日本大震災のあの日から~その他
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「むかーしむかし大きな津波が来て、ちょうどあそこの道までぜーんぶ飲み込まれたんだよ。」

むかしむかしの昔話

私は東北の海沿いの町で生まれ育った。

まだ小さかった頃、両親は共働きだったため多くの時間を祖母と過ごしていた。

祖父は船大工。

祖母も若いころは漁港で働いており、子どもの頃から海はいつも身近な存在だった。

昔々の戦争の話や火事で家を無くした話、大きな地震の話。私はそんな祖母の昔話を聞くのがとても好きだった。

その中で祖母が繰り返し話していたのが、むかしむかし町を襲った津波の話。

「むかーしむかし大きな津波が来て、ちょうどあそこの道までぜーんぶ飲み込まれたんだよ。」

その時の私は、

「まさか!あんなところまで津波が来るはずなんてないじゃない。」

そんな風に思っていた。

3.11 あの日

静寂を切り裂くアラーム音

午後の穏やかな空気とかすかな眠気の中、職場のトイレで手を洗いながら鏡をぼーっと見つめている。

その穏やかな空気を切り裂くアラーム音が、突然鳴り響く。

「何!?」

聞きなれないそのアラーム音は携帯電話から鳴り響いてくる。

恐る恐る画面を見てみると、目に飛び込んでくる「緊急地震速報」の文字。

訳も分からないまま鳴り響く携帯電話を握りしめ、急いでオフィスに戻ろうとしたその時。

地を突き破るような轟音と共にソレは始まった。

あちこちで響くガラスの割れる音。

人々の叫び声。

物の倒れる音。

立っているのもやっとの揺れの中、頭を抱えながら必死に外へ逃げたことを覚えている。

駐車場へ避難した後も繰り返し襲ってくる激しい揺れに、もう立っていることも出来なかった。

底知れぬ恐怖

泣いている人

空を見上げる人

地面に座り込む人

皆が皆、今何が起きているのかを必死に理解しようとしていた。

この地域は決して地震の少ない地域ではない。

しかし今回の揺れは、何かが違う。

今までに経験した揺れとは明らかに違う何かに、底知れぬ恐怖を感じていた。

ふと空を見上げると、黒く曇った空からチラチラと雪が降っていた。

この世の終わり

この頃祖父は病院に入院していたため、一人で暮らす祖母が気に掛かった。

すぐ車に飛び乗り祖母の家に向かう。

信号はもう動いていなかった。

鳴り響くクラクションの音

遠くで響くサイレン

携帯電話から緊急地震速報が鳴り響く度に襲われる、車がひっくり返る程の揺れ。

まるでこの世の終わりのような光景だった。

傲り

海の近くに住む人は知っている。

地震がある度に出る津波警報は、いつも予想より低い津波しかやってこない。

携帯電話に繰り返し届く大津波警報にも

「まさかこんな大きな津波がくるはずない。」

そんな風に思っていた。

そして

いつまでたっても進まない渋滞に業を煮やし、海沿いの道路に向かってハンドルを切った。

祖母の家までは、この道が一番の近道だ。

慣れ親しんだあの道

大津波警報のサイレンが鳴り響く海沿いの道路には、車の姿がほとんどなかった。

左に海が見えるその道を、全速力で駆け抜ける。

子どもの頃から慣れ親しんだ道。

何度も車で通り抜けた道。

この時はまだこの道が数分後に津波に飲み込まれるなどとは、夢にも思っていなかったのだ。

震える手

祖母の家は海沿いの高台にある。

駐車場へ車を入れ、急いで家の中へ。

祖母の顔を見た時、張り詰めていた気持ちが涙になって溢れてきた。

一体何が起こっているんだろう?

携帯電話でテレビのニュースを立ち上げる。

そこに映ったのは、大津波に襲われる町の姿。

そしてその中には、私がさっきまで運転していたあの道も映っていた。

 

震える手で携帯電話を持ちながら、あの時の祖母の声が聞こえてくる。

「むかーしむかし大きな津波が来て、ちょうどあそこの道までぜーんぶ飲み込まれたんだよ。」

今ここにある幸せ

毎年この日が来るたびに思い出す。

見慣れた町が姿を変えたあの日。

当たり前に続く日常は、当たり前ではなかったんだと気づかされた日。

 

人は生きていく中で沢山の困難に出会うだろう。

もう嫌だと投げ出したくなる日もあるだろう。

なんで自分だけがこんな思いをするんだろうと嘆く日もあるだろう。

でも

生きているだけで良いじゃない。

今あるものに感謝して、それを大切にすれば良いじゃない。

それでも人は現状に文句を言い、自分の幸福に気が付かない。

日常が日常であること

あの東日本大震災から9年の月日が流れ、私は2人の親になった。

安らかな顔で眠る子どもたちの顔を見ながら、今ここにある幸せを噛みしめている。

イライラする日もある。

疲れて立ち上がれない日もある。

夫と口論する日もある。

落ち込んで涙する日もある。

全て投げ出したくなる日もある。

でも、そんな日常が何よりも大切なことを私は知っている。

 

朝、目が覚めること。

家族が元気でいること。

変わり映えのない当たり前の毎日に感謝しよう。

それらは全て、あなたが思うほど当たり前ではないのだから。

あとがき

東日本大震災から今年で9年。

これまで自分の経験や思いを文字にしたことは一度もありませんでした。

今回このようなブログを書こうと思ったきっかけは、現在世間を恐怖に陥れているコロナウイルス。そしてそれに炙り出された人間の弱さと愚かさにウンザリしたというのが本音です。

この殺伐とした雰囲気は、少しだけ震災後のソレと似ているような気がします。

世界各地で起こる人種差別や物資の買い占め、高額転売。

噂や嘘が蔓延し、引き起こされるパニック。

こんな時だからこそ皆が手を取り合って助け合うべきなのではないのでしょうか?

 

全国一斉休校で子どもの居場所がないと嘆く親。

仕事が休めないと憤る親。

お店の売り上げが、、、

給料が、、、

昼ごはんの準備が大変、、、

 

そんなニュースを見る度に、何か大切なことが欠けているような気がしてなりません。

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